QRコード決済でトップを目指すd払い
「NTTドコモ」と言えば、知らない人はまずいない、日本のナンバーワン携帯キャリアです。1992年の設立から、常に日本の通信事業を牽引し続けています。
そのドコモが提供するQRコード決済サービスが「d払い」です。ユーザーは2021年度で4400万人、取り扱い高は1兆1300億円に達しています。この数字を見ただけでも、どれだけ多くの人がd払いを利用しているかがわかりますし、街の至るところに「d払い」のステッカーが張られています。
キャッシュレス化の波はとてつもなく大きく、日々数々のQRコード決済が誕生し続け、その市場は拡大する一方です。そんな日本のQRコード決済市場で、d払いのシェアは現在のところ第2位。そこで田原氏の率いるチームは、シェア第1位の座を目指して、日々さまざまな挑戦を続けています。
首位獲得のための方針と壁

多くの企業がそうであるように、NTTドコモはこれまでも常に「データの分析と活用」を行ってきました。その成果が、業界2位のポジションです。これは、多くのユーザーから提供されるデータを基に、ユーザーのニーズを的確に把握し、活用できたからこそです。
そして、さらなる上を目指すべく、田原氏は3つの方針を掲げました。

- ユーザー、加盟店、競合を意識したマーケットインでのサービスの磨きこみを行う
- 担当単位での局地戦ではなく、デジタルウォレット事業部が一丸となって全体での総力戦を行う
- PL・施策効果の見える化および継続的なOODA(Observe-Orient-Decide-Act)ループの実施を行う
どれもユーザーの増加と、サービス拡大、ひいては企業の発展につながる方針です。そして、これらを遂行するために「データの民主化(Democratization of Data)が必須」だと田原氏は述べました。
しかし、この方針の実行に向けて動き出したNTTドコモは、データの民主化を阻む壁に直面します。

- サービスの急激な拡大・多様化に伴い分析すべきデータ量が爆発的に増加した
- 顧客の利用実態に即したデータの把握・分析と対策が必要になった
- データの取得・分析ができる人材の不足
この3つの壁はどれも、d払いが広く認知され、多くのユーザーに利用されているからこそのものです。しかし、ここを越えなければNTTドコモのd払いは首位を獲れません。
そこでデータの民主化を実現するためのソリューションとして田原氏のチームが目をつけたのが「Amplitude」です。
データの民主化とは、簡単に言えば「データを専門家だけのものにせず、そこにいるすべての人が扱い、活用できること」です。過去のNTTドコモに限らず、社内でデータを扱うのはデータスペシャリストだけ、という企業がほとんどの中、田原氏はなぜAmplitudeを使ったデータの民主化を目指したのでしょうか。
なぜAmplitudeなのか?

d払いチームがAmplitudeを選んだ理由は3つあります。
- 大規模データの分析を高速処理できる実績がある
- 日々の運用に必要なデータをリアルタイムでAmplitudeに投下できるパイプラインの構築ができる
- 多くの社員がAmplitudeを介してデータ分析ができる環境の構築と意識づけができる

まず、Amplitudeの特徴のひとつである「大規模データの高速分析処理」で、これまでの単なる「アプリ上でのユーザーによるタップ数の分析」から「決済を含むユーザーの行動分析」へと進化しました。
その結果、ユーザー動向と決済データを紐づけた分析を高速で行うことができ、UI/UXの改善点をスムーズに引き出すことができました。これは、d払いの決済回数向上へつながっています。

次に、分析した結果から、最適なUI/UXの改善が行えました。決済まで届くデザインを評価できるようになったためです。
その結果、アプリ起動回数を向上させ、決済回数の増加にも大きく影響させることができました。

さらに、データ分析にあたる人員の増加も実現しています。スペシャリストでなくても、簡単にデータ分析ができるAmplitudeなら、データスペシャリストではない社員へも「自分もデータ分析を行い、改善策を見つける」という意識を持たせられるためです。
その結果、データ分析の人員不足が解消されただけでなく、社員全員が改善意識を持つ、能動的な社内環境も作られています。つまり「データの民主化」が成功しているのです。
首位獲得の鍵は「データの民主化」

Amplitudeを導入し、d払いチームは下記を達成しました。
- 初回立ち上げのガイド画面を短くし、ドロップ率を削減
- A/Bテスト機能を駆使してボタン位置や表示方法を最適化し、クーポン開封率を改善
- ユーザージャーニーを可視化し、離脱ポイントを把握
田原氏は、Amplitude導入によりデータの民主化の前進を感じているとのことです。
データの民主化とは、一時的なデータ分析人員の増加やスピードアップだけのことではありません。
全員でデータを分析する社内文化と、社内の多方面から発信された情報がスムーズに共有でき、いち早く改善に移せる環境を恒常的に維持できることこそが「データの民主化」です。
Amplitudeをチーム全体が使えるようトレーニングを定期的に実施し、今では憶測ではなくデータに基づいて会議を展開できるようになったとのことです。Amplitudeによって実現するデータの民主化は、今後d払いだけでなくNTTドコモ全体の発展にもつながる大きな組織改革とも言えるでしょう。
※田原氏の講演のフルバージョンはこちらでご覧いただけます(英語)。再生ウィンドウの「CC」アイコンから、YouTubeによる自動生成の英語字幕もご利用いただけます。Amplify2023のアップデートを受け取りたい方は、こちらからご登録ください。