Webサイトのファネル分析 AmplitudeとGoogleアナリティクスを比較

Carolyn Feibleman

Principal Solutions Consultant

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Posted on June 20, 2022

Webサイトのファネル分析にプロダクトアナリティクス・ツールを使用することで、Googleアナリティクスにはない、実用的でわかりやすいインサイトが得られます。

Funnel Analysis Amplitude Screen

ウェブサイトファネル分析

もしもまだ、Webサイトのファネル分析を行っていないのであれば、それはお金を捨てているようなものです。Webサイトのファネル分析をしなければ、あなたのウェブサイトに訪れた人々が、コンバージョンせずにサイトから去っていというのに、その場所や理由がわからず何も解決できないからです。

Webサイトファネル分析は、ユーザーがどこでコンバージョンプロセスから脱落しているかを知るのには役立ちますが、その分析を行うにはWebアナリティクスツールが必要です。Webアナリティクスのツールとして一般的なものはGoogleアナリティクスですが、Amplitudeを使えばより深くデータを分析できます。

[GoogleアナリティクスとAmplitudeの違いについてはこちら]

Amplitudeはプロダクトを分析するために設計されていますが、だからと言ってWebサイトに使えないということはありません。実際に、ウェブサイトのファネルにプロダクトインテリジェンスのアプローチを取ることで、コンバージョン分析に大きな力を発揮することができると考えています。

以下では、Webサイト分析におけるAmplitudeとGoogleアナリティクスを比較し、両者の関係について説明します。

Webサイトファネル分析とは?

Webサイトファネル分析とは、ユーザーがコンバージョンするまでに訪問したページのマップです。各ステージを通過したユーザーの割合を測定します。

ファネル分析では、どのステップでユーザーが減少したのかを見ることがポイントです。ユーザーが減少した理由を調査すればサイトの改善が可能となり、その結果Webサイトのコンバージョン率を上げられます。

5段階のセールスファネル

従来の5段階セールスファネル :認知 – 興味 – 評価 – 意思決定 – 購入

もしもファネル分析を行わずにWebサイトのコンバージョン率を向上させようと思うと、手当たり次第に思いつきで施策を打たなければなりません。

本来、ファネル分析ツールは、どこに焦点を当てるべきか、どのステップを優先すべきか、実験がうまくいっているかどうかを教えてくれるものです。その中でも最高のツールは、必要な実験についてのヒント示し、チーム全体が協力して目標を到達するための手助けをしてくれます。

ファネルを構築し、ドロップオフを特定する

Webサイトのファネル分析を行うには、まずコンバージョンまでにユーザーが取るべきステップをマッピングして、ファネルを定義する必要があります。

もちろん、これは分析したいコンバージョンの種類によりますが、たとえばEコマースサイトであれば、おそらく購入ファネルを調べたいと考えるでしょう。その場合、次のようなファネルとなります。

ランディングページ > 商品ページ > ショッピングカート > チェックアウト > 購入完了

また、あなたのウェブサイトがパーソナルファイナンスや予算管理ツールであれば、初回チュートリアルを調査して、何人のユーザーが無事に完了したかを確認することができます(そして、チュートリアルの完了が長期的な定着の指標となるかどうかを測定することも可能です)。その場合は次のようなファネルになります。

チュートリアル開始ページ > 銀行口座の追加ページ > 経費の追加ページ > チュートリアル完了

ファネル分析の各ステップは、そのステップを完了したユーザーの数に対応する縦棒グラフまたは横棒グラフで表現されます。ショッピングカートとチェックアウトの間、銀行口座ページと支出ページの間など、最も減少したステップは、最適化するために詳しく見る必要があります。

実験と最適化の開始

ファネルを構築し、最大のドロップオフを特定したら、なぜそのユーザーがコンバージョンに至らないのかについての仮説を立てます。そして、仮説に従ったキャンペーンやABテストで戦略を検証します。

その後、Webサイトのファネル分析を再度確認し、コンバージョンが増加したか、一定か、減少したかを確認します。この時、相関関係と因果関係の違いに常に注意を払うことを忘れないでください。

以下では、GoogleアナリティクスとAmplitudeを使ったWebサイトファネル分析の方法を比較します。その後、Amplitudeのようなプロダクトインテリジェンス・ツールを使うことで、コンバージョンファネルを次のレベルに引き上げることができると考える理由についても説明します。

GoogleアナリティクスでのWebサイトファネル分析

Googleアナリティクスはウェブサイトのファネル分析によく使われるツールですが、分かりにくく、使いづらい点があるのも事実です。

Googleアナリティクスは3つの方法でファネル分析を設定できますが、今回は3つの中で最も一般的な方法を例に説明します。

Googleアナリティクスのファネル設定方法

Googleは「目標」機能を通じてファネルを作成します。目標機能は、セッションごとのページビューやサイト滞在時間など、他の目的を追跡するためにも使用できる機能です。このページでは、ファネルを作成していることは何も表示されないので、この時点で分かりにくいと思う人は多いかもしれません。

ファネル分析には「到達ページ 」を持つ目標を設定する必要があります。「管理」 >「目標」へと移動すると、デモアカウントではすでにいくつかのゴールが設定されています。ここでは例として「支払い完了 」をゴールに設定します。

Googleアナリティクスの目標

支払い完了

目標を作成するには「目標設定」「目標の説明」「目標の詳細」の、3つの要素があります。

目標設定では、今回のファネルは「支払い完了(購入を済ませた)」を表す収益ゴールに分類されています。

目標設定

目標の説明では、目標に名前(「支払い完了」)を付け、タイプは「到達ページ 」を選択します。

目標の説明

目標の詳細の目標達成プロセスでは、ファネルのステップを定義します。各ステップはURLで入力します。

Googleアナリティクスの目標の詳細

目標の詳細

この目標を設定すると、「コンバージョン」>「目標」>「目標達成プロセス」をたどったファネル分析が見られます。これが、Googleアナリティクスでコンバージョンファネルを表示する方法です。

Google Analyticsファネル

Googleアナリティクスのファネルの確認方法

このビジュアル化では、各ステップを何人、何パーセントのユーザー(正確にはユーザーではありませんが、これについては後で説明します)が進んだか、また、ファネルを出た人が次にどのページを訪れたかがわかります。

上の例では、カートと請求書・配送の間で最も減少し、21.05%のユーザーしかコンバージョンしていません。次に多いのは、支払いとレビューの間のドロップオフです。この2つのステップは、調査して最適化する余地が大きいところでしょう。

Googleアナリティクスのファネル分析からわかること

Googleのファネル分析の主な落とし穴は、「ページURLを介してしかステップを追跡できないこと」と、「ページビューとセッションを介してしかユーザーを追跡できないこと」です。

もし、あなたのチェックアウトページが1ページで構成されていたとしたら運の尽きです。1人のユーザーが1回のコンバージョンまでに何度もステップを通過する場合、それらのアクションはすべて別々重複してカウントされてしまいます。(一方、Amplitudeでは、コンバージョンを個々のユーザーごとに表示するか、総イベント数で表示するかを選択できます。また、再生ボタンを押すなど、1つのWebページ内のさまざまな種類の行動を追跡することもできます。)

次に、ファネルでテストを行うには、技術者しかできないような全く別のカスタムプロセスを踏む必要があります。恐らく、組織内で1人か2人のGoogleアナリティクスエキスパートを指定し、その人たちを通してテストを実行することになるでしょう。そうするとボトルネックや遅れが生じやすくなります。

また、ファネルビューを担当者間で共有することも容易ではなく、コラボレーションの阻害にもつながります。ほとんどの人はスクリーンショットを使用することになりますが、それでは理解もアクションも困難です。さらには、ファネルの設定や視覚化の際にページ上での説明やヘルプがあまりなく、プラットフォーム内で質問することになります。

そして、ここまでファネルを設定する過程で「ファネル」という単語がどこにも出てこなかったことに気がつきましたか?

これが理由で、Googleアナリティクスプラットフォームでのファネル分析を学ぶには、自身のユースケースに合うかどうかわからないサードパーティのチュートリアルに頼ることになってしまっています。

AmplitudeでのWebサイトファネル分析

Amplitudeは、Webサイトだけでなくプロダクトそのものやプロダクトチームのために作られています。そして、最近の企業Webサイトは、カスタマーエクスペリエンスの一部としても捉えられるようになってきました。

Amplitudeのプロダクトアナリティクス使って、Webサイトのファネル分析を行うことで、Googleアナリティクスなどの一般的なWebアナリティクスツールでは得られない、より深い層のインサイトが得られるのです。

Amplitudeのファネル設定方法

Amplitudeでファネル分析を作成する場合、ファネルのパラメータは文章のように読めるので、それが何を意味するのかという推測をする必要がありません。また、特別なヘルプが必要な場合は、いつでもカスタマーサポートの専門家チームからの支援を受けられます。

1. まず、左側のモジュールにファネルのステップを表すイベントを設定します。下の例では、これらのイベントは、「サインアップ完了」「楽曲を再生」そして 「楽曲を購入」です。これらのイベントを “this order(この通りの順番)” または “any order (順番を問わない)”のどちらでトラッキングするか選択できます。

ほとんどのファネルは厳密に進行しますが(”this order”)、ファネルのステップの一部がシャッフルされても問題ない場合は”any order “を選択できます。 

Amplitudeでファネル分析をセットアップする

イベント設定画面

2. 右側のモジュールの、全ユーザー、新規ユーザー、アクティブユーザー、あるいはより具体的に「特定のイベントを3回目に実行したユーザー」など、トラッキングするユーザーの種類を選択します。また、この時に行動でグループ化したコホートなどのユーザーセグメントを適用することも可能です。

セグメント設定

3. 次に、画面下のモジュールで[コンバージョンウィンドウ]の値を指定します。[コンバージョンウィンドウ]は、ユーザーがファネルのファーストステップを完了してからコンバージョンするまでの期間を指定するもので、日、時間、分、または秒単位で設定できます。

メトリック設定画面

ファネル分析を始めるのに必要な設定はこれだけですが、この段階でフィルターを追加したり、ファネル内の特定のステップを分解したり、定数を追加したり、ファネルでABテストの結果を比較するなど、ビューを変更することも可能です。

ファネル分析チャートは下記のように表示されます。

ファネルチャート

Amplitudeのファネルチャートによるビジュアライゼーションなら、各ステップに到達した総ユーザー数、その割合、コンバージョンに要した平均時間が一目瞭然です。上記の図から「楽曲を再生 」と 「楽曲を購入」の間で、最も大きな落差が発生していることがわかります。

そうすると「楽曲を再生 」と 「楽曲を購入」の間のステップを調査したり、パスファインダー分析を行うことで、ユーザーがコンバージョンに至らずに、ウェブサイト上で他にどのような行動を取っているのかがわかるのです。

Amplitudeのファネル分析から分かること

Amplitudeの強みは、ページビューやセッションに縛られることなく、自分にとって重要なイベントを定義できることです。ボタンのクリックからフォームへの情報入力まで、Webサイト上のあらゆるイベントを利用してファネルのステップを構築できます。

また、ユニーク数(1人のユーザーが時間内に何度もイベントを実行しても1人とカウント)やイベント数(同じユーザーが10回イベントを実行しても10とカウント)でソートするなど、様々なパラメータを調整し比較することも可能です。

Amplitudeのコラボレーション機能を使えば、これらのインサイトをチームで共有しながら進めることもできます。

Googleアナリティクスでは、設定したファネルがそのまま適用されるため、時間軸以外での比較や分析の微調整には時間がかかり、その上複雑です。一方、Amplitudeなら、ファネルビューの中ですぐにABテストを使った比較ができます。

コンバージョンドライバーはAmplitudeのファネル分析の強力な機能で、ユーザーがステップ間で行ったすべてのアクションと、それがコンバージョンのスピードアップやスローダウンに相関しているかどうかを表示します。

そして、最も重要な点は、Amplitudeがコラボレーションを強化することです。チームメイトのためにメモや説明を残したり、ファネルビューをリンクで共有することもできます。

ケーススタディ:Patreon

Patreon(パトレオン:クリエイターのためのクラウドファンディングプラットフォーム)のミッションは、クリエイターが自分の好きな仕事で生計を立てられるようにすることです。

より多くのクリエイターが報酬を得られるようにするため、PatreonはAmplitudeを使用して会員登録フローのWebサイトファネル分析を実施しました。

そしてファネル分析とABテストを行った結果、社会的証明の使用やセキュリティの向上など、いくつかの改善が加入者の増加につながることがわかりました。また、クリエイターの活動に関する説明の充実や、カート放棄後のメール送信などでは、コンバージョン率に有意な差が出ない変更も確認されたのです。

Patreonの最も重要な発見は、「コンバージョンを向上させるのは、より多くの人に会員登録フローに入ってもらうことである」という事実でした。より多くのユーザーを会員登録フローに誘導するために、同社はファネル分析を用いて、視聴者が会員登録するまでは特定の情報を隠す「ぼかし投稿」という新機能をテストしました。その投稿をクリックすると、会員登録フローに移行する仕組みです。

そしてPatreonは、会員登録のコンバージョンを2倍以上に増やすことに成功しました。これが、グラフィックデザイナーからデータアナリストまで、チーム全員がAmplitudeを使用してファネルを調査し、プロダクトの改善を行った結果です。

プロダクトインテリジェンスでファネル分析を次のレベルへ

Amplitudeは、Googleアナリティクスよりも柔軟でパワフル、かつ分かりやすいWebサイトのファネル分析ができると考えていますが、必ずしもどちらかを選択する必要はありません。Amplitudeの多くのお客さまが、Googleアナリティクスの無料版を使用して広告パフォーマンスと獲得チャネルを追跡し、それ以外の分析にはAmplitudeを使用しています。

Amplitude Engage(英語)では、Braze(ブレイズ)Optimizely(オプティマイズリー)などのエンゲージメントプラットフォームやエクスペリメントプラットフォームと直接インテグレーションし、さらに継続的にコホートをターゲットにしてシームレスなファネル分析を実行してリテンションを向上させることができます。分析にとどまらず、プロダクトインテリジェンスを実践することができるのです。

リテンション向上についてさらに詳しく知りたい方は、Product-Led Growth ウェビナーシリーズリテンションの重要性を理解し、最適化を図る方法もご覧ください。

[GoogleアナリティクスとAmplitudeの違いについてはこちら]

Carolyn Feibleman

Carolyn Feibleman is a principal solutions consultant at Amplitude, where she advises clients on product analytics strategy and implementation.

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