プロダクトアナリティクスは、ユーザー、プロダクト、ビジネス目標の交差点に位置しています。ユーザーに継続的な価値をどう提供し、ビジネスをどう成長させるかに関わる極めて重要な部分です。プロダクトアナリティクスを活用することでプロダクト開発のプロセス全体で、チームがユーザーのウォンツとニーズに沿って行動できるようになります。
Adience社の調査でもプロダクトアナリティクスの力が浮き彫りとなっています。Amplitudeは2020年プロダクトインテリジェンスレポートの作成にあたり、350人以上のプロダクト開発リーダーに話を聞きました。その結果、調査対象企業の44%が成長戦略の一環としてプロダクトアナリティクスを使用することで少なくとも25%以上の成長を遂げていたことが判明したのです。
調査対象企業の44%が、成長戦略の一環としてプロダクトアナリティクスを活用することで、少なくとも25%成長。
プロダクトアナリティクスはこうした望ましい結果を可視化してくれるため、そういった結果をビジネス目標に結びつけることができるほか、まとまった協調性のあるチームとしての成長を推進しやすくなります。
当社はWiley Booksと協力し、皆様に役立てていただける「誰でもわかるプロダクトアナリティクス」の情報をまとめました。このブログ記事ではその一部をご紹介します。皆さんにプロダクトアナリティクスの世界とそれがユーザーと貴社のビジネスに対してどのような価値を創造するか理解を深めていただければと思います。
プロダクトアナリティクスとは?
プロダクトアナリティクスは、ユーザーがデジタルプロダクトまたはサービスにどのようにエンゲージメントしているかを理解するために使用されるプロセスです。行動データに注目して価値の高い機会を特定し、インパクトのある体験を創造することで、ユーザーを中心にビジネスを行うためのフレームワークです。プロダクトアナリティクスにより、リアルタイムのエンゲージメントと行動データを追跡、視覚化、分析できるため、ユーザージャーニー全体を最適化できるようになります。
プロダクトアナリティクスの5大要素
プロダクトアナリティクスは、5つの相互につながり合ったプロセスから成っています。
- データマネジメント:どのデータを追跡し、どのように管理するのかを決定します
- 行動インサイト:行動データを通して価値の高い機会を特定します
- プロダクト主導の成長:プロダクト体験を通して収益と成長を促進します
- ターゲティングとレコメンド:ニーズに基づいて特定のオーディエンスセグメントをターゲティングにします
- コラボレーション:ともに成長することを重視する企業文化を創造します
これらのプロセスとその結果を分析することで、こちらが思い込んでいるプロダクト体験でなく、ユーザーが実際にはどのようにプロダクトを体験しているかを確認できます。

パート1:データマネジメントを使用して堅牢な知識ベースを構築する
データマネジメントは、行動につながるデータを収集するプロセスで、プロダクト開発プロセスを通して意思決定の際にこのデータが利用されます。このプロセスはチームにとってのプロダクトアナリティクスの価値を高め、重要な情報を可視化するための第一歩となります。企業が成長するにつれて、戦略的なデータマネジメントを行うことで、ユーザー情報がチームメンバーにとって簡単にアクセスできて信頼性のあるものになっていきます。
適切なデータマネジメントとは、チームが必要とするデータと必要とする理由を理解することです。それによって、情報の追跡に使用するプラットフォームやツール、ツールを介して情報を収集する方法、データを意思決定やユーザー価値の創造に活用する方法などをコンテキスト化するのに役立ちます。
データマネジメントを、チームでのデータの使い方を定義するためのフレームワークと考えてみてください。そうすることで、適切なタイミングで適切な人が適切なデータを利用できるよう確保できます。このアクセシビリティにより、データの価値は10倍にもなります。
データマネジメントの大部分はデータガバナンスです。データガバナンスは、チームが利用できるすべてのデータを可能な限りセキュアで正確かつ最新な状態に保ちます。チームの成長とともに、このデータをスケーラブルに共有できるようになれば、プロダクトアナリティクスの残りの工程はチームにとって簡単になっていきます。
強力なデータマネジメント戦略があれば、延々に探し続けなくても貴重なユーザーデータをすべて活用できます。
パート2:行動インサイトを使ってビジネス目標を達成する
行動インサイトは、ユーザーがどのようにプロダクトやサービスと関わっているかを観察することにより収集されます。これは生データから一段階上のもので、ユーザーをより深く理解するのに役立ちます。プロダクトでのユーザーの体験がはっきりと見えるようになると、各リリースで継続的な価値を提供しやすくなります。
こうした行動インサイトにより、ユーザーが欲しいと言うものと、実際に必要なものとのつながりが分かるようになります。ユーザーが特定の方法で貴社のプロダクトに関わるごとに、その行動を見ることでその個人が貴社から得た全体的な体験についてインサイトが得られます。ユーザーの行動と意図の格差を理解することは、ユーザーにとって本当に価値のあるプロダクトを構築する方法なのです。

しかし、有益なインサイトを得るには、クロスチャネルのユーザージャーニーの重要な側面を追跡できなければなりません。ひとつの行動を集積しても全体の体験にはなりません。プロダクトアナリティクスに重点を置くことで、ジャーニーの各段階で重要なタッチポイントを追跡し、人々がプロダクトとどのように関わっているかについて全体像を作り上げることができます。
このユーザー行動の全体像は、長期的および短期的なプロダクト戦略についてより賢い決定を下すためにも役立ちます。カスタマーエクスペリエンスの大部分が、ライフサイクル全体で一貫してユーザーに価値を提供できるかにかかってくるのですから、行動インサイトこそが開発での選択の指針となります。
パート3. プロダクト主導の成長を企業文化に組み込む
プロダクト主導は、デジタルプロダクトがビジネスの成功の中核である、という考えに基づくクロスファンクショナルチームの考え方です。ですが、これはプロダクトが営業やマーケティングのような他の成長手段に取って代わるという意味ではありません。プロダクト主導は、ユーザーにとって最高のプロダクトを作るための全社的なコラボレーションを中心とするものなのです。
プロダクト主導の成長戦略の中心的な原則のひとつは、プロダクトが収益エンジンと競争力のある差別化要因の両方として存在することです。これこそが、ユーザーを惹きつけ、お金を払ってもらうよう説得し、価値を提供して、エンゲージメントを維持するものなのです。
プロダクト主導の組織になるには5つの段階を踏み、5つの共通する成長戦略を導入することになります。
プロダクト主導の成長の5段階獲得
プロダクト主導の成長の5段階獲得:プロダクトを使用して独自に新規ユーザーを獲得するエンゲージメント:一貫して使用してもらうことでプロダクトへのエンゲージメントを促する収益:プロダクト体験を通じて収益を生み出すリテンション:プロダクトを使ってもらうことでユーザーのリテンションとエンゲージメントを向上させる拡張:プロダクトを使用してアップセルや新たな購入を推進し、提供する
プロダクト主導の成長戦略:
- 教育:プロダクトを通じてユーザーを教育することにより、エクスペリエンスの向上につながる
- 最適化:既存の特徴と機能を強化することでプロダクトを改善する
- 実験:潜在的ユーザーに新しいプロダクトのアイデアをテストする
- 行動ターゲティング:適切な時期に適切なオーディエンスをターゲティングする
- レコメンド:行動インサイトを使って関連性の高いおすすめを行う
これら5つの段階と成長戦略は、プロダクトに対するユーザージャーニーと似たような形で進展していきます。プロダクト体験全体を視覚化し、途中のキーポイントで価値を追加する方法です。
パート4:パーソナライズされたターゲティング&レコメンドを使ってエンゲージメントを向上させる
レコメンドをパーソナライズできることは、今日のB2BとB2Cテクノロジー市場での最低条件です。ハーバード・ビジネス・レビューとAmplitudeが行った調査によると、デジタルプロダクトの責任者の81%が、優れたデジタル体験に対するユーザーの期待はかつてないほど高まっていると述べています(2020年1月の報告)。現代の消費者は、プロダクトと関わる際に企業側がニーズを理解してくれていることを期待しています。
パーソナライズされたレコメンドにより、プロダクトのエンゲージメントを向上させることができます。というのもこちらがユーザーを理解していることをユーザーに示すことになるためです。そして結果的にロイヤルティが向上し、ビジネスを成長させて維持できるようなエンゲージメント関係を育てられるのです。
パーソナライズにより収益とリテンションを最大30%向上させ、マーケティングコストを最大20%削減することができます。
– McKinsey
関連性の高いレコメンドの提供は、ユーザーがプロダクトとどのように関与しているかを理解してはじめて実現できます。プロダクトアナリティクスにより、プロダクトでターゲットとしているさまざまなペルソナを理解することができます。また、ユーザーのニーズに共感し、ユーザージャーニーの特定のポイントで価値のあるものを提供する手段も得られます。
行動ターゲティングは、ユーザーを共通した特性を持つコホートに分類するのに役立ちます。ユーザーのウォンツや望む結果、個人情報(PII)、行動など、どんな情報あっても、ユーザー基盤を構成するさまざまな種類の人について理解することで、特定のニーズに合わせたレコメンドを行うことができます。

Amplitudeを使った行動コホート。
これらのレコメンドを行ってインパクトを追跡する中で、ユーザー行動全体をより包括的に把握することもできます。ユーザー行動を正確に予測できるため、実際に使用してもらえるプロダクトを構築しやすくなります。
プロダクトアナリティクスでは、プロダクトと関わる際のユーザーの行動、うまくいっている部分、障害となる可能性がある問題を示してくれます。ひとつの万能な解決策があるという考え方から離れることで、それぞれのユーザーがプロダクトから本当に必要なものを受け取れるよう対応できます。
パート5:データドリブンの意思決定を容易にするコラボレーション
プロダクト主導の組織になれるのは、プロダクトアナリティクスにより牽引されるプロダクト主導の成長こそが成功への道であるとチームのメンバー全員が信じている場合のみです。プロダクトアナリティクスは言わばチームスポーツです。ユーザーに関与し、そのニーズに共感できるチームを結成することで、チーム間やチーム内でオープンかつ率直なコラボレーションを推進することができます。
そのようなコラボレーションにより、ユーザーのために賢い意思決定を行うのに必要なデータポイントと行動インサイトの可視性が向上します。プロダクトアナリティクスを始めるにあたり、「尋ねる、行動する、測定する、共有する」のフレームワークはデータとより深いレベルで関わるために役立つ有益なツールとなります。
このフレームワークを使うと、ユーザーのことをもっと知り、仮説を実験して成果を測定し、プロダクトへのインパクトについてより包括的な理解を得るようチームを促すことができます。

この学習フレームワークは、プロダクト開発プロセスの各地点でプロダクトアナリティクスを活用する助けとなります。そのため適切な質問の問いかけ、データの仮定に基づく行動、行った対応のインパクトの測定、組織とのインサイトの共有などが容易に行えます。
このフレームワークにより、チームがビジネスとユーザーに対して説明をすることができるようになります。
ユーザーのライフサイクルの各段階を具体的なデータポイントまたは行動インサイトに紐づけられることで、各チームメンバーがユーザーのほか、自分たちのアイデアのビジネス価値を意識し続けることができます。そしてその共通理解により、全員が一丸となってチームとして最高のプロダクト体験を提供できるようになります。
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データを活用してより良いプロダクトを構築する方法を理解することが、ポジティブで記憶に残るカスタマーエクスペリエンスを生み出す鍵となります。プロダクトアナリティクスの活用の始め方については、当社書籍『Product Analytics for Dummies』(誰でもわかるプロダクトアナリティクス)を参照してください。