多くの組織で、プロダクトチームはビジネス全体に及ぼすインパクトではなく、発売するプロダクトの数で評価されています。しかし全体的なビジネスインパクトのほうがはるかに優れた成功の指標なのです。企業がノーススターメトリック(NSM)を定義し、参照しているのはそのためです。
ノーススターメトリックは、プロダクトチームのビジネスインパクトを数値化する単一の主要な指標です。適切なNSMが選択されている場合、プロダクトチームの進捗状況が具体的な収益やビジネス成長に反映されるようになります。
ノーススターメトリックには、顧客価値の測定、現行のプロダクト戦略の体現、収益の主な指標となること、という3つの機能があります。
では、実際の企業ではどのようになっているでしょうか?Amplitudeでは、NSMは週次学習ユーザー(Weekly Learning Users)です。これは過去7日間に、学習内容を共有し、かつそれが最低2人以上に消費されたAmplitudeのアクティブユーザーの数です。
当社は最近、3つのプロダクトチームがノーススターメトリックを発見した方法について紹介するウェビナーを開催しました。ノーススタープレイブックの共同執筆者でもある当社のプロダクトエバンジェリスト、John Cutlerが主催し、GrowthHackersのグロース部門のトップPedro Clivati氏、Yeswareのプロダクト担当VPのInessa Lurye氏、LogMeInのプリンシパルプロダクトマネージャーであるSam Ahn氏にご参加いただきました。
このウェビナーはプロダクトリーダーにとって有益な情報が満載で、多くの学びがありました。そこで以下に、パネリストのインサイトに基づいてまとめた、プロダクトリーダーがNSMについて知っておくべき7つの項目をご紹介します。
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1. 優れたノーススターメトリックはストーリーを語る。
ノーススターメトリックは単純な指標のように見えるかもしれませんが、非常に優れたNSMは説得力のあるストーリーを伝え、チームをまとめてくれます。うまくいっているNSMはは、すべてのチームメンバーにとっての道しるべとなります。全員が向かっていける明確な目標を提示してくれるのです。
「誰もが多くの業務に取り組んでいて忙しく、誰もが自分のストーリーを持っています」とAhn氏は言います。「ノーススターメトリックによって、みんなのストーリーを1つにまとめることで、それぞれが共感して同じのストーリーの一部になることができます。その結果、共通のストーリーに貢献していく中で、仕事に意味を見出すことができます。」
Lurye氏も同様の意見で、Yeswareが生産量ではなくビジネスの成果の観点からプロダクトの提供を考えるようになったことについて説明しました。
「たとえばチームに、会議の日程調整用のプロダクトを提供するのではなく、ユーザーが設定できる会議の件数を改善することに注力してもらう、といったようなことです」とLurye氏は言います。「この枠組みにより、チームはプロダクトの提供スケジュールに縛られるのではなく、成果に目立った変化を与えられる方法を検討するチャンスが多く生まれます。」
ノーススターメトリックにより、チームはビジョンを一貫したストーリーへと具体化せざるを得なくなります。そして最終的に、NSMはプロダクトチームに行動を起こさせるストーリーとなり、それが、チームが影響を及せるインプットを結ぶ焦点となります。
2. ノーススターメトリックは組織の足並みを揃える。
多くの経営陣は、財務的視点からビジネスインパクトを考えています。それは理にかなっています。企業が成長するためには、収益を上げていく必要がありますから。しかし「収益を上げろ」というのは非常に抽象的な目標で、ユーザーへの価値創造のために日常的に行っている業務を説明するものとはなりません。
どの企業でも、全く異なる目標やイニシアチブを持った多くのチームを抱えています。Clivati氏は、会社を成長させるにはプロダクトそのものについても慎重に考える必要がある中、グロースマーケティングとは要はマーケティングだと誤解されることが多いと語ります。「最大の誤解のひとつは、グロースチームは獲得のみに注力しているというものです。実際には、グロースチームにオンボーディングやリテンションなどの領域に知識を応用する柔軟性があれば、はるかに大きな影響を与えられるのです。」
ノーススターメトリックにより、みんなの動機となる一つの指標が生まれます。すると各チームは、ノーススターメトリックの要素となるインプットに目立った変化を起こす方法がわかってきます。
「ノーススターメトリックは、すべての担当者、すべてのチーム、すべての部門が共通の方向に向かっていくことを意味しています」とLurye氏。「私たちは収益や成長率や登録数を見ているだけでなく、ユーザーに提供する価値についても考慮しています」
3. ノーススターメトリックは曖昧さを緩和し、「ノー」と言う助けとなる。
企業が成長するにつれて、各チームが様々な方向へと引っ張られていくことは多々あります。向かうべき方向性について曖昧な要素が多く存在することがあるためです。追いかけるべき具体的な指標がないと、プロダクトチームはなかなか前に進めないことがあります。「私たちは多くの曖昧さに対処しています」とAhn氏は言います。「心の中に穴が開いたような気分になっていました。」
Ahn氏はLastPassを例に挙げます。「みんな『デジタルウォレット』やその他の漠然とした用語に対する改善について考えたり、話したりしていましたが、自分たちが取りうる行動に関してちゃんとした方向性はありませんでした。この曖昧さが次第に存在感を増し、それぞれの仕事が孤立している感覚を悪化させるようになりました。」
NSMは、急に浮上してきた新しいアイデアに「ノー」というのにも役立ちます。チームの集中力が増すため、曖昧さが存在しても決定を下しやすくなります。「このレベルの集中力に到達するにはかなりの緊張感が必要かもしれませんが、最終的に組織が必要とするレベルの変化を推進するのに役立ちます」とLurye氏は言います。
改善すべき指標が1つであるため、チームは目標を達成するのに役立つさまざまなインプットについて戦略を策定し始めることができます。役立たないものを捨てるのがずっと簡単になります。
4. ノーススターメトリックは指針であり、唯一の重要な指標ではない。
NSMは企業内で強い力とはなりますが、窮極の目的というわけではありません。「ノーススターメトリックは唯一の重要な指標ではない」とCutlerは言います。「確かに指針となる指標ですが、チームが目を向けるべきものはこれだけではありません。チームは常に一連の指標を考慮すべきです。」
最終的には、プロダクトチームは必ず他の指標も検討する必要があります。企業は複雑です。ノーススターにのみに依存すると、企業を成長させるために必要な業務を過度に簡略化してしまいます。
「ノーススターメトリックは、組織全体のパフォーマンスをいかに測定するかという方向に行く必要があります」とLurye氏は言います。「これは唯一の指標ではありません。ですが、追跡や測定を行うシステムを多数導入するというのも圧倒されてしまうためできません」と同氏は続けます。「Yeswareでは、まだプロセスの初期段階ですが、チームごとに目指している成果がすべて違います。これらの成果はノーススターに集約されますが、それぞれ独立した成果でもあります。」
5. 幹部の同意は不可欠。
ノーススターは組織全体を調整できるため、幹部の同意を取り付ける必要があります。結局のところ、ノーススターメトリックはビジネスの全体的な方向性と足並みをそろえることになります。NSMでは幹部にとって重要な収益の成長が考慮される必要があります。それと同時に、ビジネスインパクトと全体的な価値を示す必要もあります。
ノーススターメトリックは、企業の戦略的ビジョンを導きます。取締役会の幹部は、進んでこの指標に基づいて共有、促進、意思決定を行う必要があります。プロダクトチームと同様、真剣に受け止めるべきなのです。
ではどうすればよいでしょうか?Lurye氏は、「全部門で主要な関係者と1対1で話し、広範に推し進める前にコンセプト、根拠、価値を紹介できるようにします」と語ります。Ahn氏もそれに同調し、幹部を含め社員に対して、ノーススターメトリックがなぜ重要かを提示する必要があると説明しています。
6. 可視性は優先事項。
NSMは理論的には素晴らしいのですが、それを見る人がいなければ、存在しないも同然です。つまり、ノーススターメトリックをできるだけあらゆる場所やタイミングで報告する必要があるのです。社員がこの指標に対して責任感を感じるようになると、同意が生まれます。
「ノーススターメトリックを、キックオフ、OKR、意思決定レビュー、戦略計画など他の要素に統合することが不可欠です」とCutlerは言います。「可視性がなければ、意気はすぐに失われます。」ノーススターメトリックはメールやプレゼンテーションにも組み込まれ、組織全体で可視化すべきなのです。
Clivati氏は、Amplitude経由でノーススターメトリックを追跡し、組織全体に毎週報告することを提案しています。「現在当社では、全部門でノーススターメトリックを伝えています」とClivati氏。「これにより全チームに責任があることが示されます。プロダクトチーム専用の指標ではないのです」
また、CEOから直にその報告がある場合、その威力はさらに増します。GrowthHackersでは、CEOが毎週出すメールの中にノーススターメトリックを組み込んでいます。
7. ノーススターメトリックの選択には時間がかかることがある。
ノーススターメトリックを採用するのは素晴らしいことですが、適切なものに着地するのに時間がかかることがあります。また、大変なプロセスでもあります。「私は企業相手にワークショップを開催していますが、2時間に及ぶ会が終わっても明確なノーススターメトリックが定まっていないことに失望する方もいます」とCutlerは語ります。
では、組織の足並みを揃えるノーススターメトリックを選ぶにはどうすればよいでしょうか?Lurye氏、Clivati氏、Ahn氏によると、さまざまなグループとワークショップを行い、各種関係者から意見を集める必要があるといいます。
「ノーススタープレイブックを読んだ後、数か月間にわたって小さなワークショップを開催しました」とAhn氏は語ります。「そのワークショップは4人ほどの小さな会で、組織の各分野から集まってもらいました。各グループはそれぞれ非常に異なりましたが、おかげでノーススターメトリックがどのようなものであるべきか、考えがまとまりました」
ワークショップは、チームメンバーにインプット、アウトプット、そして成果についてかなり考えてもらえるため、往々にして同意を取り付ける最良の方法です。
ノーススターメトリック:プロダクトチームの成功の鍵
有意義な変化をもたらすためには、チームが同じ方向に向かって取り組む必要があります。そのためには、ノーススターが不可欠です。ノーススターメトリックは、わかりやすくて行動につなげられ、価値だけでなくビジネスインパクトを表すものである必要があります。プロダクトの専門家がNSMにどうアプローチしたのか、ご興味がありましたら、当社のウェビナーをご覧ください。