デジタル金融企業は、金融サービスの現状を打破しようと躍起になっています。これまでは他の選択肢がなく、顧客は当たり前のように従来の金融機関を使っていました。
しかし今、Robinhood(ロビンフッド:アメリカ合衆国のフィンテック企業)、Venmo(ベンモ:アメリカのモバイル決済サービス)、Branch(ブランチ:ローンアプリ)などの金融アプリが、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなどが長年保持してきた領域に侵食し始めています。
その結果、顧客は市場にある多くの金融サービスアプリから好みのものを選んで、直接支払いや株式投資、給料日前の融資など、さまざまな希望を叶えられるようになりました。
デジタル金融企業と、従来の金融サービスによる直接的な競争は、金融サービス業界の長老たちの弱点を明らかにしました。古くからある銀行は肥大化し、扱いにくく、よりニッチで機敏な新興企業のように迅速な戦略にはなかなか出られません。
それに比べ、キャッシュアプリのような個人間送金(P2P)の決済アプリで行われる取引は、2023年に1兆ドルを超えると推定されています。
古くからある銀行は、今のところその規模や知名度で社会的優位に立っていますが、最近の消費者は主体的かつデジタルな「おサイフ」の管理をより好む傾向があります。これは、現在の流れについていけない、あるいはついていけない金融機関の将来に暗い兆しをもたらすでしょう。
古くからある銀行は、最新の競合他社に対して、膨大な量の顧客行動データを自由に利用できるという優位性を持っています。つまり、Amplitudeのような統合分析プログラムを最大限に活用し、データ主導型の行動インサイトと、数十年にわたる過去のデータを組み合わせることで、新規参入企業からリードを奪うことができます。
デジタルバンキングアプリをめぐる対立が激化する中、行動データは、金融サービス機関が再び優勢となり、新興企業やデジタル大手が後手に回るような先進的な戦略を考案するカギとなるのです。
Amplitudeのebook「金融サービスのためのデジタル時代の生存戦略ガイド」でも、金融サービス機関が直面する課題、業界動向、成功の鍵について深く掘り下げています。こちらもぜひ、読んでみてください。
スケーラブルで統一されたソリューションの考案
従来の金融サービス機関では、膨大な量のデータを自由に利用できますが、それを一つ屋根の下に集めることは容易ではありません。多くの銀行では、金融サービス分野での競争に対応するため、競合となる企業を買収し、そのデータや技術を取り込みました。
銀行はイノベーションを通じて競争する代わりに、その大きな影響力と予算を使って、既存のデジタルプラットフォームを買収してきました。たとえば、バンク・オブ・アメリカは最近、デジタルサービスの範囲を拡大する手段として、医療費支払い会社のアクシアを買収しました。
アナリティクスの威力は、単一のアナリティクス・プラットフォームにデータが集まっている限り、収集したデータの量に応じて増大します。
しかし残念ながら、買収に走った金融サービス機関では、貴重なデータセットが別々のサイロやシステムに格納されることになりかねません。これはどういうことかと言うと、企業を買収してデータ量が増えたとしても、それらはもともと別の企業のデータであり、それが統合されないまま引き続き個別管理されると、強みを活かせない、ということです。
たとえば、給料日前貸しのアプリと株取引のアプリでは、それぞれ異なる顧客層にサービスを提供しています。それぞれから得られる行動データは、目的のユーザー層の狭い範囲にしか適用されません。行動データを1つにまとめることで、戦略評価やアイデア出しを行い、実践においてその真価を発揮することができます。
データ統一の重要性を考えると、プロダクト・マネジャーは自社のデータを扱える分析プラットフォームを選択するのが賢明でしょう。Amplitudeのデジタル・オプティマイゼーション・システムは拡張性に優れています。そのため、買収を目的とする銀行は、事業拡大に伴う成長の苦しみを回避しながらデータを収集できるのです。
Amplitudeのデジタル・オプティマイゼーション・システムを利用すれば、プロダクト・マネジャーは異なる部門やチームに情報を要求する必要がなく、行動データの取得や、予測のテストをリアルタイムで行えます。消費者データへの即時アクセスは、より迅速な戦略立案と実施を可能にし、金融サービス機関とより俊敏な競合企業とのギャップを埋めるのに役立つのです。
複数のプロダクトやプラットフォームのバランスを取る企業には、マルチソースのデータ収集と分析が可能な分析プラットフォームが必要です。
Amplitudeでは、データソースの追加や、Salesforce、Zendeskなどとの統合も簡単にできるよう、統一性を考慮して構築されています。さらには、モバイルとブラウザベース、両方の顧客からデータを引き出せるため、プラットフォーム内で実行される評価、実験、予測が、顧客全体から情報を得て対処できている、ということを確認できます。
顧客がすでに話していることを発見する
行動データを単一のプラットフォームで統合することで、金融機関は最大の強みである顧客ボリュームを生かせます。新しい企業が徐々にその覇権を奪っている一方で、FDIC(連邦預金保険公社)の推計では、米国の95%の世帯が依然として従来の金融機関と取引をしていることがわかります。新興企業はデータを増やす、もしくは購入しなければなりませんが、歴史的に実店舗を持つ金融サービス企業は、数十年にわたるデータをすぐに利用できるのです。
何千人分もの顧客行動データは、プロダクト・マネジャーに以下のような洞察を与えてくれます。
顧客離れ
モバイルバンキングアプリのダウンロード率は非常に高いのに、最初の2週間で顧客の利用率が大きく減少します。それはなぜでしょうか?
その理由は、カスタマージャーニーを追跡することで、顧客にとってどのイベントが摩擦の原因になっているかを明らかにできます。サインアップ時に利用率が低下した場合、要求する個人情報の種類と量、メッセージング、あるいはUIを見直す価値があるかもしれません。
Wells Fargo & Companyは、モバイルバンキングアプリのデザインを変更する前に顧客の行動を調査し、頻繁に行われるインタラクションのボタンをメニューやサブメニューの階層に埋め込むのではなく、ホーム画面に表示するようにしました。
顧客の嗜好
顧客のプロダクトの使い方は、実際の使用方法とは大きく異なることがよくあります。Zelle(ゼル:個人間送金サービス)は、Venmoに対抗するために大手銀行によって導入されました。しかし、時間が経つにつれて、顧客はそれぞれのアプリを根本的に異なる方法で使用していることが明らかになったのです。
大手銀行と連携しているためか、顧客は請求書払いやより多額の取引にZelleを使い、典型的なP2Pの取引額は74ドル程度にとどまっていました。顧客のために構築した機能を、顧客が実際にどう利用するかを知ることは、将来のユーザー体験改善のための基礎を作ることにつながります。
特定の顧客セグメントに関する貴重なインサイトは、他の何百万人分もの顧客のデータの下に埋もれてしまう可能性があります。Amplitude Recommendは、プロダクト・マネジャーが顧客を共通の行動に基づいてコホートに整理し、特定のセグメントがプロダクトとどのように相互作用しているかをよりよく理解できるようにするためのツールです。
たとえば、金融機関が提供した新しいモバイル小切手入金機能を、パワーユーザーが利用しているかどうかを調べたい場合、最も熱心なユーザーのみで構成されるコホートを作成し、そのグループの何パーセントが積極的にその機能を利用しているかを知ることができます。
新たな機会
様々な顧客層の行動を調査することが、新しいプロダクトや機能の必要性を明らかにするかもしれません。たとえば、Zelleのユーザーは個人的な請求書の支払いにこのアプリを好んで使用しているという事実があります。では、商業顧客について分析すれば、商業領域でも同様の機会が見つかるでしょうか?
JPモルガン・チェースの考えは、最近発表した企業間電子送金機能(BtoB Digital Bill Pay Feature)が示しています。新機能の追加や新プロダクトの発明が、より多くの行動データを生み出し、分析、開発、評価のループを開始し、継続的な成長を促進するのです。
データ駆動型予測による戦略の構築とテスト
銀行は、もうひとつの大きな強みである「過去のデータ」によって競合他社を圧倒しています。銀行はこれまで、コンピュータ時代を通じて金融サービスを支配してきました。つまり、何百万人もの顧客の金融履歴を、ユーザーの行動と照らし合わせて計算することができるのです。
Amazonは、行動データと購入履歴を利用してレコメンデーションを行い、同社の総収入の35%に相当する利益を上げています。Netflixがわずか数年のデータで顧客が次に何を欲しがるかを予測できるなら、金融サービス機関にも大きなチャンスがあります。
予測は、過去のデータ、行動データ、コンピュータ学習、統計モデリングを用いて、顧客が将来ある行動を取る可能性がどの程度あるかを示すものです。行動データの分析からオンボーディングのワークフローに問題があると判明した場合、プロダクト・マネジャーは新しく設計されたフローがコンバージョンを高める可能性をテストできます。
金融サービスのプロダクト・マネジャーが特定の結果についての可能性を知ることで、何百万人もの顧客に影響を与える変更を行う前に、行動に基づいた戦略のテストが可能です。
Amplitude Experimentでは、プロダクト・マネジャーがABテストを行い、より小規模でターゲットとなるユーザーセグメントで予測される結果を検証できます。つまり、データ駆動型の予測とセグメント化された実験の間で、プロダクト戦略を台無しにする当て推量と「直感」を取り除けるのです。
これらの予測に基づく実験で検証されたプロダクト戦略こそが、従来の金融サービス機関をデジタル金融レースの最前線に押し上げます。銀行は市場の変化に反応するのではなく、自ら変化に影響を与えられるのです。
銀行は、将来の顧客ニーズを予測したデータ誘導型の商品と機能を生み出すことができます。新興企業を凌駕するのに十分なデータ量と、ハイテク企業と互角に渡り合える十分な資金を持つ伝統的企業は、金融サービスの破壊者に対抗できる立場にあるのです。
顧客インサイトを活用し、成果を上げる戦略を策定する
金融の未来は、よりパーソナルに、より手軽に、ますますデジタル化されていきます。しかし、金融サービス機関が持っているような深く幅広い行動データを得るには、まだ何年もかかるでしょう。今こそ、顧客から長年にわたって提供されてきたインサイトを活用し、顧客が望むフィンサービスプロダクトを開発する時です。
Amplitudeのebook「金融サービスのためのデジタル時代の生存戦略ガイド」でも、金融サービス機関が直面する課題、業界動向、成功の鍵について深く掘り下げています。
金融業界に従事している方は、ぜひこちらからebookもあわせて読み、デジタル時代に打ち勝つ戦略を策定してみてください。